どうもです.
前回,遊漁船の安全設備強化について,法廷無線設備について書きました.
その続きで,のこり3つの義務化について掘り下げ,最後に補助金の話を書こうと思います.
まず,のこり3つの義務化は以下の3つです.
・海難発生時に自船位置情報を発信する非常用位置等発信装置
・水中での救助待機が不要で、荒天時に落水せず乗り移りが可能な救命いかだ等
・沈没を防ぐ、または退船までの時間を確保する隔壁の水密化等
画像等はこちらのページから引用します.
海難発生時に自船位置情報を発信する非常用位置等発信装置
平水区域は搭載義務なしなので,その他の海域が対象になります.
これは端的に言えばAISかEPIRBを搭載すればOKです.
AISは自船の位置や船名,針路,速力を自動で周囲に知らせる装置
EPIRBは遭難したときに救助機関へ非常信号を出す装
です.
どっちかだけでOKです.
安全思想としては別物の製品なので,どっちも搭載するほうが安全度は増します.
どっちも結構高い・・・
AISは安いと10万ちょっとから15万ぐらいであります.高いやつだと40万ぐらいです.
アンテナとかの配線までやってもらうと工賃もかかるので,もうちょっとかかるかと思います.
EPIRBは20万ぐらいです.
水中での救助待機が不要で、荒天時に落水せず乗り移りが可能な救命いかだ等
このいかだについては結構ややこしいです.
まず,搭載義務については水温ごとに分かれます.
その水温分布は公開されています.
以下です.
概ねは次図のとおりとなります.

で,10度未満だとすべての船舶が搭載,10度以上,15度未満は平水を超えて航行する船は搭載,15度以上20度未満の場合は同じく平水を超えて航行する船舶(ただし,特別措置あり),20度超えは搭載義務ナシです.
ということで,まずチェックするべきは,自分の海域の水温分布です.
私の住む九州では,
九州北部が10度以上,15度未満になる時期があり
それ以外の九州沿岸〜屋久島までが15度以上,20度未満になる時期があります.
トカラ以南は通年20度超え地域指定なので搭載義務ナシです.
ということで,鹿児島本土の船は15度〜20度になる時期には航行しない,もしくはいかだを搭載する.もしくは搭載義務なしにする特別処置が必要です.
15度〜20度になる時期というのが,おおよその海域ごとに分かれていて,
例えば,
阿久根,川内,甑島北部だと12/10~5/13
串木野,甑島南部,野間池,秋目,坊あたりだと12/24~4/28
枕崎近海,頴娃,開聞,湾口,佐多あたりだと1/10~4/4
志布志湾,都井岬あたりだと1/10~4/8
種子屋久海峡,種子島だと1/30~3/8
のような感じです.
これらの地域のこの指定時期だと,いかだ搭載義務もしくは別途の処置が必要になります.
この別途処置がまためんどくさいぐらいにわかりにくくて,5つの方法があります.
①伴走船の用意(非現実的のため説明しません)
②船団の形成(鹿児島海域ではほぼ意味がないので説明しません)
③救助船を配備(非現実的のため説明しません)
④水密全通甲板もしくは不沈性および安定性を有する船舶
この④がかなり現実的な方法で,とくに水密全通甲板であるなら15度〜20度でもいかだ搭載不要です.
この水密全通甲板の定義がややこしくて....水産庁の説明会でもまだ詳細分かってないぐらいのことを言っていました.要は波をかぶって甲板に海水が打ち込んでも中に浸透せずに,外に排出されるような甲板だったらいいということなんですが・・・.基本漁船タイプの船だったらこれになってる?わけでもないようで・・・条文を読んでも自分レベルの知識では全然理解できません.
一応,条文は
小型船舶安全規則 第7条に甲板の水密について書かれてあり,
開口部の規定は小型船舶安全規則 第8条~第11条にかかれています.
漁船タイプでもフルフラットデッキだとコーミングがないので,ただ置いてあるだけだと厳しいかもしれません.
詳しくはJCIに問い合わせるほうが良さそうですが,JCIに問い合わせても,何も分からなかったという報告もあり,まだまだ現場は混乱してそうです.
⑤母港から5海里を超えて航行しない船舶
これも結構現実的で,近場だけみたいな船は15度以上20度未満であれば,いかだ不要ということです.
なので,九州南部で冬に遊漁船やる場合には,水密全通甲板かどうかがかなりキーになってくると思います.
一方で北部・・・・.
北部は壱岐水道,対馬,響灘,玄界灘で15度を下回ってくる時期があります.
ということは?
この時期に航行するなら,いかだ搭載必須ということです.
具体的にはたとえば
七里海域だと2/13~3/28の期間
壱岐水道だと1/31~3/31の期間
響灘では1/25~4/9の期間が
15度未満になる.とされています.
ブリジギングの時期などに出る場合はいかだ必須・・・.
ヤバさしか感じないです.
さらにさらに・・・乗り込み場所から水面までの高さが1.2m以上ある場合には,乗り込みのためのスライダーも搭載しないといけません!
搭載できるいかだがかなり限られている問題があります.
ただなんでもいかだならいいというわけではなく,基本的に認定品しかダメです.
整理品リストは公開されています.
https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001978442.pdf
基本的に2社しか作ってません.
RFDジャパンと藤倉コンポジットです.
なんかリスト少なくない?という感じです.
例えば藤倉コンポジットならFRC型というまだ比較的安価なモデルもあるのですが.それは国交省のリストには載っていません.なぜ?
ちなみに,RFDジャパンの6人〜10人乗りのいかだだと150万以上します・・・.
藤倉コンポジットのFRC型だとその半額ぐらいなのですが,これが適合品かどうかはJCIや国交省に訪ねたほうが良いです.
スライダーもなんでもいいわけではなくて,使用できるいかだとの組み合わせがあります・・・.
つまりはめちゃくちゃめんどくさいです.
まぁ,業者に投げちゃうのが一番なのかもしれませんがぼったくられないためにはある程度知っておく必要がると思って書きました.
あとはいかだには寿命もあり,毎回検査もあるみたいです.
藤倉コンポジットのHPによると耐用年数は8年ほどだとか・・・.
8年サイクルで100万オーバーの機材導入となると,経費回収のためにはかなりの値上げが必要になるのでは?と推測します.
うーん・・・・.
とりあえず鹿児島ではいかだ問題はそこまで起こらなそうに思いますが,他地域だとかなり厳しい論争が巻き起こりそうな予感がプンプンしますね.
沈没を防ぐ、または退船までの時間を確保する隔壁の水密化等
「隔壁の水密化等」と聞くと難しく見えますが,考え方は単純です.
大きくは,船内に水を広げにくくすることと,万が一浸水してもすぐ沈まないようにすることの2つです.
国交省の説明では,対象船にはまず水密全通甲板の設置を求め,さらに一部の船には,どこか一区画が浸水しても沈没しないように水密隔壁を配置することを求める整理になっています.
ただし,ここで誤解してはいけないのは,すべての遊漁船が大がかりな構造改造をしなければならないわけではないという点です.国交省資料では,現存船や5トン未満の小型船など,本格的な水密化が難しい船については,浸水警報装置と排水設備の搭載,または不沈性及び安定性を有する構造といった代替措置でも対応可能とされています.
つまり,実務的には「隔壁を全部作り直す」のではなく,まずは自分の船がどの区分に入るのかを見極めることが先です.航行区域,旅客定員,総トン数,既存船か新造船かによって,求められる内容は変わります.ここを飛ばして「とりあえず隔壁工事」と考えるのは早計です.
この水密化も結構複雑なので,やはりJCIや国交省に直接問い合わせて早めに確認しておいたほうが良く,すくなくとも自分の船ならどういう対策ができるのか?現状で十分なのか?を把握することが非常に重要と思います.
補助金制度
とりあえず,この遊漁船の安全設備義務化が実施されるにあたり,
相当な負担がある!ということはおわかりいただけたかと思います.
そこで,補助金が2つ用意されています.
1つが日本財団の助成金を活用した補助事業
PDFはこちら
https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001980118.pdf
補助率は1/2です.
これは去年もやられていた補助金と同じような内容です.
正直こっちを今から申請する旨味はかなり少ないですので,無視してOKと思います.
もう1つが
遊漁船の安全・安心確保推進事業補助金です※こちらは遊漁船のみ対象の補助金です.

PDFはこちら
https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001980603.pdf
こちらは補助率が2/3となっているので,基本的にはこちらの補助金を活用したほうが良さそうです.
まだ詳細ルールが出揃っていないので,どうやってつかうか?というのはこれから更新されていくであろうHPをよく見ておく必要があります.
そのためにも今,自分の船で何が義務化対象になっているのか?とその見積もりをとっておくような作業を進めておくことが最善なのではないか?と思います.
終わりに
ということで・・・・2回にわたり,更新しましたが,
マジでややこしいです.
全国には遊漁船が約1.6万隻あります.
1.6万隻のうち,このめんどくさい義務化を乗り越えてまで遊漁船を続けようと思う船,どれぐらいいるかな?
というのが正直なところです.
現行制度だと,漁師してるけれど,とりあえずお客さんも取れるように遊漁船登録してあるけれど,実際に人を乗せることは年に何回かしか無い・・・みたいな船も多いと思いますし,登録だけしたけれど惰性で更新してるような船もいると思います.高齢化もあったり,いかだつめないぐらい小さい船もあったり.
色々な問題はあると思います.
ただ,悪いことばかりではなく,ここでちゃんと義務化装備をちゃんとしてハードルを超えれば,新規参入障壁がめちゃくちゃ高いので,新しい遊漁船は全然増えないでしょうし,いっきに遊漁船が減るので,1隻あたりの遊漁船の価値は高まるかもしれません.
吉と出るか凶とでるか・・・.
少なくともあと6年後にはほぼ全ての船舶が義務化されているはずなので.
そのあたりでどういう状況になっているのか見極めたいと思っています.
本当に大変な世の中になりました.


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