糸巻き量で変わるハンドル一回転の巻取り量を計算してみる

どうもです.

以前,募集した,記事リクエストの中に以下のようなリクエストがありました.

「深い場所でジギングをしていると,巻取り量が少なくなっているのを感じるが,例えば,200mでジギングをしていると,ハンドル一回転の巻取り量はどれぐらいになっているのか?」

※原文ママではありません

つまり,ラインの放出量とハンドル一回転の巻取り量をおおよそ計算できれば良いということになります.

ハンドル一回転のライン巻取り量を知るためには,ライン放出された段階でスプールの径がいくらになっているのか?とギア比が必要です.

ライン放出時のスプール径をRt,ギア比をRaとすると,ハンドル一回転につき,Ra回スプールが回転しますから,スプール外周×ギア比でハンドル一回転の長さを求めることが出来ます.

つまり,Pi・Rt・Ra が求める答えになります.

例えば,シマノのオシアジガー2000HGはギア比が6.2:1で,スプール最外径が60mmです.
したがって,最外径までラインを巻いているときの巻取り量は
3.14×60mm×6.2=1168.08mmとなり,公式に公表されている最大巻取り量117cmが導けます.
正しくは116.8cmぐらいが正しいとは思いますが.そこまで厳格にはしていないのでしょう.

ということで,ライン放出時のスプール径を算出するというのが答えを求めることになります.

ある程度,簡略化して考えていきたいと思います.

必要な定数は以下の通りです. ※最終的に要らない変数も含まれますが

L;巻いているラインの長さ(m)
L1:ライン放出量(m)
R0:ラインを巻き始めたときのスプール径(下巻きをしていた場合は下巻きした状態での径)(mm)
R1ラインを巻き終わったときのスプール径(最外形まで巻くなら最外形で可)(mm)
W:スプール幅(mm)
ギア比:Ra

ラインを放出したらどれだけスプールが細くなるかを知るためには,どれぐらいのラインでどれぐらいの体積を占めているかを知らなければなりません.同じ長さでも太いラインは細いラインに比べてたくさんの領域を占めますから,ライン放出するに従って,細いラインよりも巻き取り量の減少幅が大きくなってきます.

考え方の順序は色々あると思いますが,まず,ラインが巻かれる領域の体積を円筒近似で求めます.

外側の円柱の体積ー内側の円柱の体積
=Pi・(R1/2)^2・W – Pi・(R0/2)^2・W
={(R1/2)^2-(R0/2)^2}・Pi・W (mm^3)
={(R1/2)^2-(R0/2)^2}・Pi・W・10^(-6) (m^3)

となります.

この領域を長さL(m)のラインが占めていると考えます.
ラインだけで空間を埋めているということはないのですが,ラインとラインの間には均等な隙間があると仮定しますと,ラインが長さあたりに占める領域の割合は変化しないので,問題にはなりません.

では単位長さのラインがどれだけの領域を占有しているか?を考えます.
これは簡単で,上記の仮定を受け入れるなら,

ラインが巻かれる円筒の体積をラインの長さで割ったものになります.
つまり,

{(R1/2)^2-(R0/2)^2}・Pi・W・10^(-6) ÷ L
となります.

この値をとりあえず,Aとしておきます.

では,L1 (m)ラインが放出された場合にどれだけの体積がスプールから無くなったかを考えます.
これは
A×L1で求まります.

ラインが放出されると,円筒の最外径から徐々に円筒が細ってきます.
細った円筒の外形が求めるべきRtになります.
これを求めるためには,

A×L1と無くなった円筒の体積が等しいという方程式を解けばOKとなります.

無くなった円筒の体積は外の円柱ー内の円柱ですから,

{(R1/2)^2-(Rt/2)^2}・Pi・W・10^(-6) (m^3)となります.

したがって,

{(R1/2)^2-(R0/2)^2}・Pi・W・10^(-6)×L1 ÷ L = {(R1/2)^2-(Rt/2)^2}・Pi・W・10^(-6)
となり,

{(R1/2)^2-(R0/2)^2}・L1/L = (R1/2)^2-(Rt/2)^2

(Rt/2)^2 = (R1/2)^2-{(R1/2)^2-(R0/2)^2}・L1/L

(Rt/2)^2 = (R1/2)^2-{(R1/2)^2-(R0/2)^2}・L1/L

Rt=2 {(R1/2)^2-{(R1/2)^2-(R0/2)^2}・L1/L}^(1/2)

ということになります.

ここで求めたRtを使って,Pi×Rt×Raを計算すれば,L1(m) だけラインが放出したときの巻取り量を求めることが出来ます.

いくつか例を出して,計算してみたいと思います.
アキュレートの600サイズのスプール最外形は71mmです.
あくまで仮にですが,600mラインをストックするために少し下巻きをして,ラインを巻く前のスプール径が30mmだったとします.ラインはパンパンに巻いて,600m巻いたときの外径は71mmとします.

ギア比は5:1です.

ラインを放出していない場合はスプール径は71mmなので,ハンドル一回転の巻取り量は3.14×71mm×5なので,1114.7mmということで,約111.5cmぐらいが最大巻取り量となります.

では,ラインを100m放出した時はどうでしょうか?

Rt=65.96となり,約103.5cm

200m放出されたら?
Rt=60.5mmで巻取りは95cm

300mでRt=54.5mmで85.5cm
400mでRt=47.4mmで75cm
500mでRt=39.8mmで62.6cm
600mでRt=30mmで47.1cm

ということになってきます.

スプールが大きいうちは外径も大きいので,ライン放出にともなう変化が少ないですが,外径が小さくなってくると,変化が大きくなってきます.これは体積が径の変化の2乗に比例しているためです.

ということで,ある程度の仮定は含みますが,ライン放出時のラインの巻取り量の計算方法を考えてみました.

余談ですが,アキュレートの場合だと,スプール最外径とフレームが非常に近接しているので渡しの場合スプールエッジから1mmほど余裕を持って巻きます.その場合,最外径が69mmとなり,巻取り量も108.3cmに落ちます.すると雪崩式にライン放出したときの巻取り量も落ちていきます.

逆にオシアジガーだと,エッジを超えて巻くことも多いです.

スプール最外径を利用するよりは一度自分がどれぐらいの径までラインを巻いているか,測ってみられるのも良いと思います.

また,上記はあくまで計算値なので,実際とは誤差があると思います.
実際の値は実際にリサイクラーなどでラインを一定量放出した状態で測るのが望ましいかと思います.

一回転の巻き量が何センチが自分のジャークに合っているのか?
ハンドル一回転の巻き量で釣りがどう変わるのか?などは各人で考えて見られるとまた面白いと思います.

でわ.

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